JIS X 0208:1997規格票の附属書6で包摂規準が適用されている区点位置を、包摂規準連番から引けるように並べ替えたもの。
包摂規準を適用可能な部分字体を含む区点はもっとあるはずだが、JISでは包摂規準の演繹的適用を禁止しているため、とりあえず附属書6か「6.6.3.2 包摂規準詳細」に書かれているもの、もしくは第二次規格(83JIS)で包摂規準に関わるほど字形が変更されたものに限定した。
このリストは以下の点で附属書6とは異なる。
字(区-点) | 誤 | 正 | 備考 |
---|---|---|---|
葛(19-75) | (字書番号)[S6888][M31420]82 | [S6888][M31420]82,150 | 第二次規格で字形変更 |
渠(21-84) | (字書番号)[S4323]M17764 | [S4323][M17764]50 | 包摂規準詳細には出てくる |
靴(23-04) | (字書番号)S9052' | [S9052']77 | 第二次規格で字形変更 |
薯(29-82) | (字書番号)[S7035][M32191]82 | [S7035][M32191]82,125 | 第二次規格で字形変更 |
牌(39-55) | (字書番号)S4725 M19854 | [S4725][M19854]103 | 第二次規格で字形変更 |
冕(49-43) | (字書番号)[S524]M1545 | [S524]M1545127 | 包摂規準詳細には出てくる |
總(69-33) | (字書番号)S6089 M27844 | [S6089]M27844159 | 包摂規準詳細には出てくる |
翔(70-38) | (字書番号)S6310 M28689 | S6310[S6310'][M28689]18 | 第二次規格で字形変更。 |
聰(70-66) | (字書番号)S6393 M29154 | [S6393]M29154159 | 包摂規準詳細には出てくる |
譁(75-86) | (字書番号)[S7749][M35928]82 | [S7749][M35928]82,85 | 第二次規格で字形変更 |
大漢和・新字源ともに規格票の例示字形とデザイン差のみの違いであるため附属書6には出ていないが、例示字形と異なる実装も存在する。これらの中に常用漢字・人名用漢字・83JISで字形の変わった字は含まれない。
字(区-点) | 連番 | 備考 |
---|---|---|
堽(52-46) | 連番115 | e漢字と文字鏡で実装が異なる。大漢和により忠実な実装はe漢字のほうらしい(規格票の「附属書7 区点位置詳説」を参照) |
橡(38-43) | 連番156 | |
瑁(64-80) | 連番176 | |
掫(57-56) | 連番183 | |
梟(59-70) | 連番184 | e漢字と文字鏡で実装が異なる。 |
虍(73-40) | 連番185 |
大漢和・新字源ともに規格票の例示字形とデザイン差か連番82のみの違いであるため附属書6には出ていないが、第二次規格で字形が変更され、明らかに(連番82以外の)包摂規準が与えられているもの。これらの中に常用漢字・人名用漢字は含まれない。
字(区-点) | 連番 | 備考 |
---|---|---|
稽(23-46) | 連番186 | 正誤表で包摂規準詳細に追加された。正誤表における連番は152-1であるが、便宜上JIS X 0213の連番を当てる。 |
鴇(38-30) | 連番78 | 新字源の字形は「七」から左に突き出した部分を無理やり切り取ったように見える |
悗(56-04) | 連番81 | 新字源は字書参照なし |
斃(58-45) | 連番16 | |
爨(64-06) | 連番148 | e漢字と文字鏡で実装が異なる。 |
甍(65-16) | - | 連番82のみ |
茣(72-20) | 連番48 | 連番82のみ。新字源は字書参照なし |
蔗(72-84) | 連番164 | 連番82のみ |
輓(77-46) | 連番102 | |
靠(80-49) | 連番42 | |
龜(83-93) | 連番89 |
大漢和・新字源いずれの字書参照も与えられていないため附属書6には出ていないが、第二次規格で字形が変更され、明らかに包摂規準の与えられているもの。
字(区-点) | 連番 | 備考 |
---|---|---|
枦(59-37) | 連番5 | |
粐(68-68) | 連番5 | |
舮(71-68) | 連番5 |
資料によってバラつきがあったのだが、JIS X 0208:1997でいちおう決着が付いているので、以下原則としてこれを基準に考える。もっとも規格票の信頼性はかなり怪しく、はっきり言ってAdobe-Japan1-4のほうが信頼できる。
JIS X 0208:1997の解説によると、第二次規格では300字の字形が変更になり、22組44字が入れ替えられ、4字が追加とともに入れ替えられた。300という数字はJIS X 0208:1997の規格票の附属書6から、第二次規格で変更になったもの(「78」か「78/4-」を含むもの)を拾っていった数と一致する。この300字は入れ替えられた44字と追加入れ替えのあった4字もすべて含み、その内訳は
[1] | 附属書6に第一次規格の字形が示されているもの | 256字 |
[2] | [1]のうち、実際には字形が変わっていないもの | 2字(遥瑶) |
[3] | 附属書6に入れ替え先の区点が示されているもの | 44字 |
[4] | [3]のうち、字形が変わったもの | 1字(迩) |
で、実際に字形が変わったのは[1]-[2]+[4]=255字。
入れ替えがあった44字が上記の[3]なのかというとちょっと違う。「靭靱」は入れ替えとともに字形が微妙に変わったので第一次規格の字形が示されている。ちなみに入れ替えとともに字形が変わった字はもう1つあるのだが(77-78→迩38-86、ISOの登録簿で第一次規格の字形を確認)、なぜかこれは第一次規格の字形が示されていない。なぜ文字によって規格票の扱いが違うのか謎であるが、規格票は案外間違いだらけなので見落としの可能性が高い。
すると入れ替えられた文字のうち[3]に含まれるのは「靭靱」の2文字を除いた42文字になるはずだが、附属書6を数えていくと44文字分ある。足りない2つは、追加かつ入れ替えになった4文字のうちの2文字(尭槙)である。残りの2文字(遥瑶)は第一次規格の字形が示されているが、実際には入れ替えのみで字形の変更はない(上記の[2])。
規格票には78JISの45-58(遙)の字形として1点しんにょうの字形が示されているが、ISOの登録簿では2点である。「逢辻」が2点しんにょうの字形になったのは78JISの4刷以降であることを考えると刷数による違いかもしれないが、1点の字形がExt字形に採用されていないしISOの登録簿でも「逢辻」は1点で45-58は2点なのでそれも考えにくい。78JISの45-58は初版から2点であった可能性が高いのである。では規格票の1点しんにょうの字形はいったいどこから…。
64-86の78JIS字形は83JISの84-04(瑤)と同じだが、なぜか規格票では第一次規格の字形として入れ替え後の64-86の字形(瑶)が示されている(つまりどこも変わったように見えない)。これもISOの登録簿を見る限りではちゃんと入れ替えられているし、規格票の解説にも入れ替えがあったと書かれている。
結論として、追加入れ替えのあった4字はすべて単純な入れ替えである。
規格票の字数を数えた人は他にもいて、"78" "78/4-"のマークが付いた字は257文字なのだそうな。これは上記の[1]+[4]である(著者にメールを送って確認)。
257文字のうち、表外漢字字体表には152文字が収録されているのだそうだが、これも151文字しか見つからなかった。(2003/12/23)「靭」も表外漢字字体表517番のデザイン差としてこちらに数えられていた。常用・人名・字体表の異体字(で表外漢字字体表に含まれないもの)は14字で字数は同じだが、上記の「靭」が抜けていて「迩」が入っているという違いがある。
旧JISと新JIS 83JISで変更されたのは、常用漢字に関するものが14字(第一水準)、人名用漢字に関するものが第一水準12字/第二水準4字の16字、通用字体の準用に関するものが151字(すべて第一水準)、異体字の水準間での入れ替えが44字22組、部分字形の統一に関するものが47字(すべて第二水準)、独自の理由に関するものが第一水準7字/第二水準15字の22字、計294字。
97JISの解説の「300字」に含まれるがこちらに含まれないのは「靴隙創熔邉扈」の6文字。「隙扈」以外は包摂規準の立てられていない微細な字形デザインの変更である。
新旧JIS漢字相違点一覧(改訂版) 漢字に関しては245文字変更、4文字追加、44文字交換で293文字の変更ということになってる。97JISで変更されたことになっている「300字」のうち、ここに挙げられていないのは「概靴冴捌創蛛邉」の7文字。「概冴」以外は包摂規準の立てられていない微細な字形デザインの変更である。
PSTricksと日本語について Adobe Japan1-2に含まれるJIS C 6226の字体のうち、
UCSに割り当てがあるもの…36字(互換包摂29字を含む)
UCSにも割り当てがないもの…214字(いくつかは互換漢字として追加されているかも)
これは実際に字形の変わった255字のみが含まれる(入れ替えのみで字形変更のない文字はCMapの変更のみで対応できるため)。255字のうち、足りない5文字(概冴捌蛛邉)の78JIS字形は、Adobe Japan1-4ですべて追加された(CID13403〜13407)。
250字のほとんどはExt字形。ただし「芦迄逢辻」(の78JIS字形)の4字形はExt字形外から(2文字がAdd字形、2文字がExt字形にもAdd字形にも含まれない78JIS字形)。
またExt字形のうち、以下の8字形は上記に含まれない。これらは83JISでは変わらなかったが、78JISの版数間で異同があったもの。この場合、Ext字形では(すなわちNECでは)初版の字形を(たとえ誤字形であっても)採用する方針であった。「逢辻」のしんにょうが1点なのも、「-78/4」の字形を採用した結果だと思われる。藜がJIS X 0208:1997の規格票に誤字形として掲げられている字形とはまた異なる字形になっている(木の上の傘がない)が、ISOの登録簿を見る限りではExt字形が正しい模様(「正しい」誤字形というのも妙な話だが)。なんか規格票に対する信頼がどんどん揺らいでいくんですが…。
CID | 区点 | 採用された字形 | |
---|---|---|---|
7641 | 閏 | 17-28 | 78/1 |
7692 | 叱 | 28-24 | 78/1 |
7820 | 嗤 | 51-48 | 78誤 |
7827 | 幤 | 54-82 | 78誤 |
7838 | 燗 | 63-83 | -78/4 |
7861 | 藜 | 73-28 | 78誤 |
7876 | 閻 | 79-69 | 78/1 |
7877 | 雎 | 80-19 | 78誤 |
Add字形の多く(「芦迄」を除く42字形)はJISでは変更されなかったか、変更があってもJISの規格票のいずれとも異なる(ただし97JISの包摂の範囲内ではある)字形の模様(調査未完)。
対応表で「78」「78'」「Exp」「Exp'」が付いてる152字と同じ? (ぜんぜん違う。「Exp」「Exp'」14字と「78」「78'」2字は規格票では変更扱いになっておらず、逆に規格票で変更扱いになっていても表外漢字字体表で字形が採用されなかった文字が15字ある。採用されなかっただけで、字形切り換え自体は可能であると思われる)
特別編第9回 Ken LundeのCJKV Information Procssingによれば250文字が変更された。というわけでAdobe-Japan1で変更扱いになっているのも250文字。
表4 AJ1-3(だと思う)で表せない3字。AJ1-4にはたぶん、AJ1-5/APGSには間違いなくあるはずだが
Macの平成明朝はAJ1準拠で、Mac版Illustratorの字体切り換え機能が使えるらしい。Windows用だとWindows標準文字セットの文字(字形)しか入ってないと思うけど。
グリフ数 | CID | 説明 | |
---|---|---|---|
Adobe Japan1-0 | 2,965 | 1125〜4089 | JIS X 0208-1983 第一水準(字形はX 0208-1990) |
3,388 | 4090〜7477 | JIS X 0208-1983 第二水準(字形はX 0208-1990) | |
254 | 7633〜7886 | Ext字形 83JISで削除された字形のうち、PC98に載っていたもの | |
44 | 7961〜8004 | Add字形 83JISで削除された字形のうち、富士通のPCに採用され、かつExt字形にないもの | |
2 | 8266〜8267 | 83JISで削除された字形のうち、Ext字形にもAdd字形にも含まれないもの(2点しんにょうの「逢辻」2字形のみ) | |
Adobe Japan1-1 | 2 | 8284〜8285 | JIS X 0208-1990で追加された2字 |
Adobe Japan1-2 | 359 | 8359〜8717 | NEC選定IBM拡張文字 |
Adobe Japan1-4 | 83 | 13320〜13402 | 常用漢字の旧字体(常用漢字表のカッコ内字) |
5 | 13403〜13407 | JIS C 6226-1978の異体字でAJ1-3までに未収録のもの | |
229 | 13408〜13636 | JIS X 0208-1983の異体字 | |
646 | 13637〜14282 | JIS X 0208:1997の異体字 校正必携の異体字もすべて含む | |
13 | 14283〜14295 | IBM拡張文字の異体字 | |
1,090 | 14296〜15385 | JIS X 0212-1990の漢字 | |
21 | 15386〜15406 | JIS X 0212-1990の異体字 | |
15 | 15407〜15421 | Unicodeの漢字(JIS X 0221-1995の追加漢字集合サポートを満たすため) | |
20 | 15422〜15441 | K-JISの漢字 | |
2 | 15442〜15443 | 大漢和辞典の漢字 |
83JISで字体が変わったのは原則として表外字のみだが、当用漢字になく常用漢字で追加された95字のうち7字は常用漢字での字体の変更に追随している。また83JIS以降に人名用漢字に追加された文字の字体変更も先取りしている。
Adobe Japan1-4 切り換え漢字字形一覧 Adobe Japan1-4までに追加された漢字字形の内訳
OpenType 時代の文字 Adobe Japan1-4で追加された漢字2,124字形のさらに細かい内訳
ヒラギノPro漢字グリフ一覧 Adobe Japan1-5の追加部分で印刷標準字体・JIS X 0213以外のものは電算写植外字だそうな
ヒラギノ明朝Pro W6でAJ1-4以降に追加された全字形を表示したPDFがある。それによると、漢字はCID16779から収録。内訳は
グリフ数 | CID | |
---|---|---|
16779-17232 | JIS X 0213第三水準のうちAJ1-4までに未収録のもの | |
17233-19129 | JIS X 0213第四水準のうちAJ1-4までに未収録のもの | |
20297-20316 | JIS X 0213:2000の追加字形 | |
38 | 19312, 19346, 20175, 20222, 20263-20296 | 表外漢字字体表の字形(筆押さえが付いたままだが…)。 |
FontAvenue外字パック NECが認定した78JISというかJIPSと90JISの違いは279文字(+90JISで2文字追加)
パブリフォント - DynaComware Corp.(ダイナコムウェア) 285字形が区別されている模様
JPC Adobe-Japan1-2とJISの字体変更の歴史
Welcome to ~taiji at gyve Adobe-Japan1/CNS1/GB1/Korea1の全字形を並べた、Ghostscriptのサンプルpsファイルを変換したPDFあり
千都NEWSバックナンバー 第5号にExt字形の一覧。
freehand 10 日本語版 での和欧間、約物の設定について 「エキスパート」の説明あり